2013年12月16日月曜日
2013 12/15 長居植物園 ガーデンイルミネーション
男はカメラバックにD800と16-35mmと28-300mmのレンズを入れて、それを三脚と共に車に積み込んで車のエンジンをかけた。
長居植物園のガーデンイルミネーションの撮影に出かける為である。
男には2つの趣味があった。ひとつはロードバイクに乗ること。ただ冬の寒さに耐えられない為、この季節はほとんど乗ることが無い。
もうひとつの趣味が写真を撮ることである。
写真撮影を趣味としてから2年半が経つが、最近は、はじめてデジタル一眼レフカメラで撮り始めた頃のようなときめきはもう無かった。
しかしそれでも写真撮影に出かけるのは、何かアイデンティティの確立のような作業のようなものかもしれないと男は考えていた。
写真を撮り、RAW現像をして記録に残し、その写真をネットに上げてブログに書く。その一連の流れが、自分の存在意義の証明のように感じていたのかもしれない。
男は車の運転が好きである。他者との関わりはあるが、個室である所が気に入っている。
また車の中で歌を唄うのも好きだ。最近のお気に入りは、TEEのベイビー・アイラブユーである。
長居植物園までは車で1時間ほどなので、歌を唄いながら運転しているとすぐに到着した。
男は長居公園の地下駐車場に車を停めて、カメラバックを担ぎ、三脚を手に持って車を出た。
地下駐車場から長居植物園までは徒歩で10分ほどかかる。男は失敗したと思った。長居公園南平面駐車場からのほうが距離が近い。少しでも体力を温存した方が、撮影の時に集中出来るのだ。
男はつぶやいた。
「まあいい、今日は昼寝もしたし体調も悪くない。」
実際に足取りは軽く、頭は冴えている。気温は低いが、冬の撮影の為に準備しておいた、カメラ用のグローブは暖かく、またユニクロで買った防風パンツは安いながらも、外気を遮断して体温を上げてくれた。
長居植物園の入り口にたどり着くと、やはり日曜日のせいか家族連れが沢山いた。
夜間のイルミネーション撮影だと、男はレンズの絞りを絞ってスローシャッターで撮影する事が多いので、日中よりは人が写り込む可能性は少なくなるが、それでも人が少ない方が風景写真にはいい。
男は日曜日に来たことを後悔した。しかし、この日を逃すと天候が不安定になるため、しょうがないとも思っていた。券売機に入園料の300円を入れて券を購入して、入り口で券を渡すと来年のミニカレンダーを貰えた。有料入園者へのプレゼントらしい。
長居植物園の中に入ると早速絵になる光景が広がっていたので、男は三脚を立ててカメラをセットして、レリーズケーブルを使ってシャッターを切った。
木が赤くライトアップされているのに、男は感銘を受けた。
暑い雲の合間から時折顔を出す月を一緒にイルミネーションとライトアップされた木を撮影する。
男は月が出るタイミングと他の人が写り込まないタイミングを合わせようと必死であった。
三脚を立てて撮影していると、あからさまにカメラの前をわざと横切って行く心無い人もいる。
男はそんな時、そういう輩のケツを蹴りあげたい気持ちになるのをグッとこらえる。
「こちらも三脚を立てて場所を取って邪魔になっているんだ。しょうがない。」
男も自分のしている行為が迷惑になるとはわかって、三脚を立てて撮影しているのである。
しかし、撮影中にカップルがカメラの前を横切る時は、嫉妬心から男の方のケツを蹴りあげる衝動を抑えるのには必死だったようだ。
男には試したい事があった。フィルターのテストである。
フィルター無し
スノークロスフィルター使用
ソフトフィルター使用(プロソフトンA)
「イルミネーションが密集していない所ならソフトフィルターはふんわりした感じを出せて有効だな」と男は思った。
ソフトフィルター使用
ソフトフィルター使用
男は基本的に被写体をシャープに撮るのが好きである。ソフトフィルターをつけると悪く言えばぼんやりした写真が撮れるので、好みでは無かったのかフィルターを外して撮影する形にすぐに戻してしまった。
フィルター無し
フィルター無し
男は移り気の激しい面も持ち合わせている。フィルター無しで撮影するのにもすぐに飽きて、スノークロスフィルターを付けて撮影する形に変えた。
ひと通り撮影して車に戻る時にやはり駐車場まで歩くのが男は辛かった。撮影中はあまり気にならないが、ちょこちょこ構図を変更するために三脚を持って移動するので、思っている以上にエネルギーを使っているのだ。
「帰りにコンビニで肉まんを買って帰ろう。冷凍枝豆が安いローソンに寄ろう。」
そんなことを考えながら、男は長居公園の駐車場を後にして家への帰路を唄いながら過ごしたのであった。
家に帰り、まず男は風呂に入った。滴るシャワーの音、男はシャワー派なのだ。
外での撮影で冷えた身体を暖めた後に、男はRAW現像をはじめた。
基本的に撮影したその日のうちにRAW現像するのが男の流儀だ。
記憶が色褪せないうちに撮った写真を現像に反映させるのだ。日にちが過ぎれば感情も変わってしまう。出来ればその感情さえも現像に反映させたいと男は考えているのだ。
現像を終えて男はつぶやいた。「次はどこのイルミネーションイベントを撮影しようか」
男はそうつぶやくと、おもむろに雑誌「冬ぴあ」を見てイルミネーションイベントを物色し始めた。
現像を終えると写真は男に取って過去になる。
男は過去に興味を示さない。ただひたすた前を向いて歩いて行こうとしているのだ。
(了)
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